ヤブ医者伝説

とある町の一角に存在する「杉山クリニック」は、大抵の病気なら治してくれる素晴らしい診療所である。
そんな杉山クリニックに今日も幾多の人々が訪れるのであった。

杉山「次の人どうぞ。」
患者A「あ、どうもお久しぶりです先生。」
杉山「いいから座れ、注射するぞ。」
脅迫している、何ちゅう医者だ。
杉山「今日はどうなさいました?」
患者A「いや、それが最近咳が止まらなくて…、ゴホゴホ。」
杉山「シミュレーションだね、その咳は。ウソだろ。」
冷たい視線で患者の症状を疑っている。
患者A「先生、本当ですよ、ゴホゴホ、風邪ですかね…?」
杉山「過剰なシミュレーション行為。レッドカード、退場。」
患者Aは外に放り出された。

杉山「次の人どうぞ。」
患者B「先生、ニンジンが食べられないんです。どうにかしてください。」
杉山「帰れ。」
患者Bはニンジンとにらみあいながら診療所を去った。

患者C「こんにちは。」
杉山「まだ呼んでないよ。」
患者C「一刻を争う事態なんです、助けてください。」
杉山「そんな人がよく『こんにちは』なんて言えるね。」
患者C「うちの息子が40℃の熱を出してしまって…、風邪にしては熱が高すぎます。」
杉山「その息子さんは今どちらに?」
患者C「やべ、連れてくるの忘れた。」

杉山「次の次の人どうぞ。」
患者D「先生、私を飛ばすんですか。」
杉山「ええ。」
バタン

隣の部屋から彼の側近の看護士である「ポン太」が現れた。
彼は頭脳明晰で患者にも優しく、まさに理想の看護士であった。
ポン太「先生、患者Eさんがお薬が切れたとおっしゃるんですが…。一度診療してからの方がよろしいですか。」
杉山「その薬によく似たラムネでも渡しておけ。」
ポン太「分かりました。」
彼もまた杉山に洗脳された哀れな犠牲者の1人であった。

杉山「次の人どうぞ。」
患者F「一昨日あたりからどうも胃が苦しくて…。何だかお腹が重たいんです。」
杉山「どれ、ちょっと服をあげてください。診てみましょう。」
杉山は患者Fの胸に聴診器を当てた。
ドクン ドクン ドクン カシャーン ドクン カシャーン
杉山「何やら体内からシンバルのような音がしますね。」
患者F「え?何ですかそれ。僕の心臓はどうなってるんですか?」
杉山「一般的にいう【急性シンバル症】だね。」
患者F「聞いたことないんですが。」
杉山「なぁに、薬を飲めば治る病気ですよ。」
患者F「本当ですか?良かったー。」
杉山「それじゃお薬50年分出しておきますね。」
患者Fは50年間薬を飲み続けねばならなくなった。

杉山「次の人どうぞ。」
患者G「インフルエンザの予防注射をしにきたんですが。」
杉山「ああ、昨年は全国的にインフルエンザが酷かったですからね。」
患者G「ええ、私も去年かかってしまいまして…、だから今年はもうかからないようにと。」
杉山「分かりました、それじゃ左足を出してください。」
患者G「足ですか。」
杉山「ああ、靴は脱がなくていいよ。」
患者G「私は一体何をされるんでしょうか。」
杉山「靴なんか軽く貫通する。」
患者G「いや、怖いからやめてくださいよ。…もういいです、今日は帰りますから。」
杉山「ふふ…今夜はオールナイトだから帰さないよ。」
患者Gは診療所奥の物置に監禁された。

日が暮れるに伴って来診者も減り、そろそろこの診療所も今日は戸を閉める時間帯となった
ポン太「先生、最後の患者さんです。」
杉山「どうぞ、入ってください。」
患者I「先生、今日の晩ご飯何にすればいいんでしょう?」
杉山「もう医者辞めよ。」

杉山クリニックはある日突然にして姿を消したという。




 
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