浦島次郎

昔々、ある所に浦島次郎という男が住んでいました。
ある日、浦島は浜辺で騒いでいる子供たちを見かけました。
その子供たちは何をしているののかと思い、浦島は近くへ寄っていきました。
見れば子供たちがカメをいじめているじゃありませんか。
浦島「君たち、カメを逃がしてやりなさい。」
子供「なんだおっさん、来んなよ。」
子供「それとも俺らにぶっ飛ばされたいのか?」
浦島「ご一緒させていただきます。」
浦島もカメをいじめ始めました。

しかしやはり浦島は良心が許さなかったため、カメを助けようと思い、
子供たちに動物をいじめてはいけないと言いました。
浦島「君たち、やっぱりカメがかわいそうじゃないか。だから…。」
子供「文句あんのかよ。」
浦島「だからもっと続けなさい。」
彼にもはや大人の威厳はなかった。

子供たちはそのままカメををいじめ続けました。
浦島は子供たちがいじめをやめないと察したので、
隠し持っていたライフルを子供達に向けると、途端に子供たちは疾風のごとくその場を去りました。
そして浦島はカメを海に逃がしてやりました。
カメは彼に豪快な蹴りを入れてから海に帰っていきました。

何日か経って、浦島が家でMDを聞いているとインターホンが鳴りました。
浦島「どちらさまですか。」
カメ「カメです。」
驚いて天井を突き破った浦島は、玄関へ駆けていってドアを開けました。
カメ「こないだ助けてもらったお礼に竜宮城にお連れします。」
浦島「やめてくれ。」
カメ「言うことを聞け。まだ死にたくないだろ?」
浦島「竜宮城ってなんだい。」
カメ「いいから表の車に乗れよ。」
浦島太郎はカメと一緒に車に乗って海へ入っていきました。

車はどんどん海深く走っていきます。
浦島「ちょっと、水の中なんか入って大丈夫なのか。」
カメ「大丈夫ですよ、ここは海ですから。」
浦島「何の根拠にもなってないね、ブクブク…。」

車は真っ暗な深海を付き抜けて、竜宮城につきました。
竜宮城の門をくぐると、乙姫様が出てきました。
乙姫「カメや、このお方は誰だい?」
カメ「知らない。」
浦島「おい。」
カメ「思い出しました、こいつがこないだ私を殺そうとした浦島です。」
浦島「助けたつもりだったんだけど。」
カメ「結果的に助けられたことになりました。」
浦島「どうぞひとつよろしくお願いします。」
乙姫「名前がうざい。」
浦島「いきなりすごいこと言われた。」

乙姫様は竜宮の奥にある大広間へ浦島を連れて行きました。
そこには見たこともない素晴らしい食べ物がたくさんありました。
そこで浦島はごちそうになることになりました。
浦島「これは何という食べ物ですか?」
乙姫「塩素。」
浦島は魚のパフォーマンスを見ながら食事をして、その後も竜宮で楽しく暮らしていきました。

しかしそんな楽しい生活も、あっという間に3年が経ちました。
ある日、乙姫様は居候している浦島にいい加減嫌気が差したので、
秘密の部屋に浦島を呼び出し、こう言いました。
乙姫「これあげるからもう帰って、早く、お願い。」
浦島「何でまた突然?」
乙姫「あと5秒。」
浦島は怪しげな黒い重箱のようなものを受け取って急いで竜宮を出ました。
竜宮の外にはあの時のカメが車に寄りかかりながらタバコを吸っていました。
カメ「よう、とうとうおかえりだな。」
浦島「追い出されたんだ。」
カメ「ついでに言っとくが、その箱は【玉手箱】だ。絶対開けるんじゃないぞ。」
浦島「じゃなんでもらったんだ。」
カメ「いいから開くな。」
浦島「何が入ってるんだい。」
カメ「生ゴミ。」
浦島「俺はゴミ出し係か。」

車に乗って数時間、海面に浮上し、やっとのことで故郷に着きました。
カメ「アディオース。」

今日浦島は3年ぶりに家に帰ることになります。
しかし村の様子がなんだか変わったみたいで、村の人も知らない人ばかり。
自分の家の近くに行くと、家があった場所が墓地になっていました。
浦島は居ても立ってもいられず、道行く人に事情を話すことにしました。
竜宮城に行っていたこと、自分の家がなくなっていることなどなど。
しかし村人の反応はこうでした。
浦島「…というわけで竜宮城という場所に行ってきたんです。」
村人「おまわりさん!不審者です!」
浦島「いや待って!僕の家がないんですけど、何か知ってます?」
村人「人殺しだー!」
浦島「もういやだ。」

そう、浦島が竜宮で3年を過ごしていたうちに、陸の世界では300年もの月日が経っていたのです。

浦島はもう死にたくなったので、玉手箱を開けて死のうと思いました。
彼は以前昔話で「浦島太郎」を読んだことがあり、
自分と名前が非常に似ている、こりゃ笑うしかねーやゲラゲラという状態に陥っていたので、
たとえ箱の中身があのカメの言うとおり生ゴミであろうとも、
玉手箱を開ければ煙が出て年老いてしまうということを知っていたのです。

ガタガタ、ガタガタ
玉手箱は開かなかった。




 
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