ダーウィンの剣

ダーウィンの剣。
それはsword(ソード)として、中世ヨーロッパに名を馳せた伝説の武器である。
また、「史上唯一人間が神に近づくことのできた証」という異名をもち、
現在まで多くの人々が手にすることを恐れてきた、まさに神の投影ともいえる。
だがこの剣は以降のストーリーに一切関係がない。

この数十年来の大不況を迎えた世界において、そんなことはまったくお構いなしに生きる人々はたくさんいる。
その日本代表者とも言えるのが、都内某所の高校に通う「吉郎」17歳である。
誰もが知る、あのマクドナルドの「てりやきバーガー」を
日本一上手に食べられるということが理由で、日本代表になった。

そんな彼は今日、学校の定期テストで満点を取った。
学校からの帰り道、彼は友人の「℃」と一緒に歩いていた。

℃「吉郎、お前ついに試験でマイナス100点取ったらしいな。」
吉郎「いったいどうすれば200点も勘違いできるんだ。プラスだプラス。」
℃「そんなバカなことがあるか。万が一でもあり得ないし、
  千が一でも百が一でも十が一でも、そして一が一で約分すれば1。」
吉郎「俺お前大嫌いだ。」
℃「いいから解答用紙を見せてみろよ。」
吉郎「いいだろう。ふん、あまりの驚きに皿を目にするなよ。」
そんな不思議なアクションはできるわけもないが、吉郎はバッグから白い紙を取り出した。
その紙の右上には確かに赤い文字で書いてあった、0点と。
℃「うそつきも大概にしろジェーン。」
吉郎「そんなバカな!?確かに俺は今日、
   担任から100点と書いてあるテスト用紙を受け取ったはず!?」
℃「本物の用紙は俺がさっき校庭で焼いたからもうあるわけないんだ。」
吉郎「やっぱ俺お前大嫌いだ。」

あの日以来、℃は学校の授業に出席しなくなった。
常に腕立て伏せを必死でしている。ついに壊れてしまったのかもしれない。
吉郎は授業の合間の休み時間に、℃のいる屋上へと向かった。
吉郎「℃、コンビニ行こうぜ。」
℃「いや、シュークリームなんかより、プロテインジュースを500リットル頼む。」
会話もままならない。シュークリームの話題がどこから出てきたのかもわからない。
そして、最近の彼は何故か異常なまでにプロテインジュースを好むのだ。
おそらく1日で東京ドーム5個分は飲んでいると思われる。
暇があれば1秒間に100回というスピードで腕立て伏せをやっている。
℃「ハアハアハア…。」
吉郎「℃、少し休憩したらどうだ。」
℃「黙れ、話しかけるな。俺は…集中してるんだ。」

℃が変わってしまってから早くも1ヶ月が過ぎた。
やつの体力も限界に近づいているだろうと吉郎は確信した、だが…
℃「ハハハ、俺が疲れているだろうって?
  なに言ってんだ、まだ内閣不信任案は出されてないんだぜ?」
やはり狂っている。℃は高校生にして天涯孤独の身なので、
吉郎が責任を取って、彼を近所の総合病院に連れて行くことにした。
そして待合室で座っていること2時間、℃が診察室から運ばれてきた。
吉郎「℃、どうだった?」
℃「火星人は俺が仕留めることにした。」
吉郎はしばらく℃を入院させる事にした。

吉郎「じゃ、また明日来るよ。」
℃「あばよ伊藤博文。」
ついに吉郎の名前も忘れたらしい。

℃が入院して2週間が経った、一応今日が退院日となっている。
吉郎は朝早く家を出て自転車にまたがり、病院へと向かった。
吉郎「℃、ついに退院だな。」
℃「やあ吉郎、今日は絶好のでんぐり返し日和だと思いたいだろう?」
依然、発言内容が極めておかしいが、
吉郎を伊藤博文だとは思わなくなったようだった。
吉郎「じゃあ帰ろうか。」
℃「またな。」
吉郎「お前も来るんだカス。」

2人はとりえあず吉郎の家へと戻った。
ようやく℃の退院を迎え、精神的にも参っていた吉郎は家で休もうとしていたのだが、
家にはある人物が待ち構えていた。地獄の王の部下、「崖上ポ三ョ」である。
名前を見る限りでは、彼は先日公開された映画
「崖の上のポニョ」の主人公ポニョの親戚のようにも思えるが、
実際には「ガケノカミ・ポサンョ」という壮絶な読み方をする。
ちなみに彼はこの複雑怪奇な名前が嫌いなため、
知人には自分のことを、何故だか「秀吉」と呼ぶよう頼んである。

吉郎「どうしたんだ秀吉、何か用か?」
秀吉「実はマルマレンコフに追われているのです。」
マルマレンコフとはこの辺一帯を支配している地獄の王のことだ。
聞いた感じではロシア人っぽいが、彼は生粋のジャパニーズである。

℃「なんで君は植物なの?Can you 光合成?」 
こいつは狂っているため、会話に介入してくると全てが崩壊する。
なので吉郎は℃を冷蔵庫に押し込んで鍵をかけた。
吉郎「なんでお前がマルマレンコフに追いかけられているんだ?」
秀吉「それは…私がマルマレンコフに仕えておりました昨日のことです…。」
彼は昨日のことをすべて吉郎に話した。その内容はとてつもなく鮮烈なものだった。

マルマレ「秀吉、ヒゲ剃りを出せ。」
秀吉「あなたにはヒゲがありません。」
マルマレ「もうお前の顔も見ることもないだろう。」
マルマレンコフは「お前のモノは俺のモノブレード」を取り出し、秀吉に斬りかかった。
ズバッ
秀吉「ギャー!」
斬られた、しかし斬られたのは彼の右手の爪の先端だった。爪きりで切る手間が省けた。
彼は命からがら逃げ出し、一晩中なんとか逃亡し続け、
この吉郎家についさっき駆け込んできたのだ。

吉郎「大変だったんだな、このゴッド吉郎にまかせろ。お前を助けてやる。
   ここんとこ、やつの振る舞いが気にならないんでな。ヤツをつぶすにはいい機会だ。」  
久保「ありがとうございます。では作戦を練りましょう。」
吉郎「んなもん既に先週練った。」
久保「さすがです。」
家を出てすぐの角を左に曲がった、しかしそこには想定外の男が仁王立ちしていた。

吉郎「℃!どうしてここに!?」
℃「フフフ…そんなことはどうでもいい。俺には今しなくてはいけないことがあった。」
吉郎「完了済みならもう登場すんなよ。」
いつも通りの会話に思えるが、今回の℃は明らかに違っていた。
狂っているのではなく、体中から闘気がありふれているようだった。

℃「吉郎…お前には…死んでもらう!」
突然℃は吉郎に飛び掛かって来た。やつの手には波動砲が装備されていた。
秀吉「吉郎!援護します!」
しかし秀吉の動きを留めてしまうほど、℃はすさまじい勢いで四方八方に波動砲を連打している。
その衝撃の速度からして、波動砲は改造してあり、パワーが段違いに強力になっていた。

℃「そう!ガムテープの右側では台風がFUTOMOMO!?俺FUTOMOMO!?」
℃は意味不明な言葉を発しながら、体中を回転させている。
吉郎が、このままではこの辺一帯が破壊されてしまうと思い、
自慢のワルサーP-48で℃を撃ち留めようとしたとき、秀吉が叫んだ。
秀吉「吉郎!私がヤツの動きを引き付けま」
ドゴ
秀吉はやられた。

吉郎「℃!すまない!」
ズキューン
吉郎の撃った銃弾は℃の後頭部に命中した。
しかし一滴の血も垂らさずに、℃はその場から急に消え去ってしまった。
吉郎「な…なんだと…!?…そ、そうだ、秀吉!」
秀吉はコンクリートに壁に頭をぶつけて気絶していた。
吉郎「君の勇姿は忘れない。」
秀吉「まだ死んでませんよ。」

突然現れた℃の異様な行動に疑問を感じつつも、
2人は急いでマルマレンコフの家へと向かった。しかし途中にはまた必要のない者がいた。
吉郎「先生!」
そこにいたのはまぎれもなく吉郎と℃のクラスの担任だった。名前は公表されてない。
秀吉「吉郎、気をつけてください!こいつはマルマレンコフの手下です!」
吉郎「裏切ったな先生!」
担任「裏切ってなどいない、私は元々マルマレンコフに仕えていた。」
吉郎「教育委員会に通告してやる!」
こいつもキレた。キレやすい人間ばかりでどうしようもない世の中である。

秀吉は興奮した吉郎を押さえようとしたが、
吉郎の小指チョップで吹っ飛んで気絶してしまった。軟弱な男だ。
担任「100点取ったからっていい気になるなよ!」
吉郎「あんなもんもうこの世にねぇ!」
担任「受けてみろ!バーニングメテオアタック!」
吉郎「ぷぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
この上なく見事に直撃した。

吉郎「フフフ…そんな技じゃ、いつまで経ってもこの俺をプリンに変えられんな。」
担任「そんなことをするつもりはない。」
吉郎「ともかく、貴様はあと500時間の命だ!」
担任「そりゃ安心だ。」
吉郎「必殺!昨年父さんに買ってもらった熱線銃!くらえ!」
ビビビビビビ
吉郎「Oh!」
吉郎は銃を逆さに持っていたので、銃口が自分の方を向いていた。
担任「どうしようもないダメ生徒だな、ここまでバカな奴は私以外にいないぞ!」
吉郎「!」
担任「!?」

秀吉「くっ…ホトトギスフラッシュ!」
秀吉は立ち上がって最後の力を振り絞り、技を繰り出した。
担任「何っ!?」
吉郎「秀吉!」
担任「ぐああああああああっ!」
秀吉の手から放たれた3000羽のホトトギス特攻隊は担任に直撃し、
彼は20メートル近く吹っ飛ばされ、大通りに投げ出された。

担任「どぅん!」
担任は通りがかりの大型トラックにぶっ飛ばされた。
その後、その通りで大交通事故が起き、犯人は担任ということになった。

最後の気力を振り絞って攻撃した秀吉は、衰弱しきっていた。
秀吉「吉郎…私はもう駄目です…この先はあなた一人で行」
ドゴ
吉郎は秀吉にとどめをさした。
吉郎「スパイダーマンめ、待っていろよ!」
吉郎は今の戦闘で本当の敵を忘れてしまったらしい。

吉郎「脚力増強スニーカー!」
吉郎はポケットから破れ掛けのスニーカーを取り出した。
吉郎「ここからマルマレンコフの城まで10000km近くあるからこれを使おう。」
明らかに海外である。
吉郎「よし、オーケイだ、ゴー!」

それから1時間後、ユーラシア大陸を横断した吉郎はフランスに到着した。
吉郎「フフ、ワインの国フランスだ。」
しかしそこには残虐非道な地獄の王、マルマレンコフがいた。
マルマレ「フフフ、よくここまで来れたな、
     俺は今そこでダイエットコーラをコップ2杯と3分の1飲んでいたところだ。」
吉郎「興味ゼロむしろマイナス。さて本題だ。貴様…℃を操っているな。」
マルマレ「ハフハフ、よく見抜いたな。誉めてやろう。」
そう、℃はマルマレンコフに使われていたのだ。吉郎は℃と戦ったときから感じていた。

吉郎「おい貴様、秀吉が言ってたぞ。」
マルマレ「何と?」
吉郎「お前にくだらないことで殺されかけたと。」
マルマレ「ふん、お前には関係ない!消え失せろ!」
マルマレンコフは指先から秒速10センチのビームを放った。
吉郎「ハハハ、こんなの目をつぶってても避けられるぜ。」
しかし突然ビームは加速し、吉郎の右腕に当たった。
吉郎「ちぇえええええええええええええええええええええ!」
と、そこへ、フランスの空彼方から紫色のマントを身にまとった℃が飛んできた。

吉郎「℃!?」
℃「必殺℃パンチ!」
℃は壮大なパンチをぶち込んでマルマレンコフをぶっ飛ばした。
マルマレ「くっ…!おのれ℃…この俺に従うのをやめるというのか!」
℃「そうだマルマレンコフ、俺は伊藤博文を助けに来たんだ。」
また吉郎を伊藤博文だと思っているらしい、だが吉郎は今回だけは突っ込まなかった。

吉郎「℃…。」
℃「安心しろ、俺が来たからにはもう駄目だ。」
吉郎「そんな気がした。」

マルマレ「くくく…℃などいなくても、俺には4人もの部下がいる、
     お前などいてもいなくても同じだ!くらえ!波動砲!」
吉郎「危ない℃!避けるな!」
℃「裏切り者っ☆」
℃は木っ端微塵になった。

マルマレ「幽霊だ。」
吉郎の背後には半透明の秀吉がいた。
ゴースト秀吉「吉郎、よくも私を死なせてくれましたね!」
吉郎「だって正直、登場当初から邪魔だったしお前。」
ゴースト秀吉「コノヤロー、殺してやる!」
吉郎「南無阿弥陀仏…南無阿弥陀仏…。」
秀吉は成仏してしまった。

マルマレ「フフフ…あとはお前だけだな吉郎。」
吉郎「邪魔者は消えた、死ねい!マルマレンコフ破壊光線!」
そのままの名前すぎてどうしようもない。
しかし攻略本によると、威力は特A級だというからあなどれない。
マルマレ「ヒラリマント!」
ぴらっ
吉郎「Really?」
吉郎も木っ端微塵になった。

マルマレ「ハッハッハ、やはりこの世を治めるのはこのマルマレンコフしかいない!」
その時、木っ端微塵になったはずの℃が復活した。
℃「マルマレンコフ、この世を治めるのはこの俺だ!」
マルマレ「!…生きていたのか。」
そう℃のマルマレンコフを倒す本当の目的は世界征服だった。
℃はマルマレンコフに仕えたふりをして、世界征服をするチャンスを狙っていたのだ。

マルマレ「言ってろ、真の征服者の力を見せてやる。」
マルマレンコフは手のひらを空にかざし、何かを唱え始めた。
℃「何をする気だ?」
マルマレ「見ろ!これこそ我が最強の部下、小柴さんだ!」
やつが召喚したのは伝説の召喚獣「小柴さん」であった。ちなみにどうあっても敬称は省略できない。
マルマレ「さあ、やってしまえ小柴さん!」
℃「あんなのが相手じゃ…さすがの俺もきついぜ。」

小柴さん「新・トリノトリノ!」
これは世界最強と言われている、伝説的な攻撃系呪文である。
℃「俺もここまでか…。」
マルマレ「ついに諦めたか!」
℃「今日は4月1日。」
℃は世界最強の攻撃を軽々よけた。
マルマレ「使えねー、この召喚獣。」
小柴さんはマルマレンコフに粉砕された。

マルマレ「やはりお前を倒すのはこの俺のほかにいないようだな。」
℃「フフフ、残念なやつめ。圧倒的な力の差を思い知るがいい…消えろ!」
マルマレ「そっちこそ消えてもらおう。」
℃「いやいやお前が先に消えろ。」
マルマレ「ダメだ、お前が先だ。」
℃「お前だって。」
マルマレ「お前だ。」
℃「お前。」
マルマレ「お前。」
℃「お前。」
マルマレ「お前。」
℃「お前。」
マルマレ「俺。」
マルマレンコフは消えた。

℃「フフフ…俺こそが真の地獄の王(キング オブ ハーデス)、℃さまだぁぁぁぁぁ!」




 
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