サンタからの贈り物

今日は12月24日クリスマスイブ、正確にはイヴだが。
東京の某所で暮らす「市川和雄」は元気いっぱいのはずの5歳児。
昨日は階段を6階から1階まで一気に転げ落ちたり、一昨日は川に突き落とされたりと危ない少年だ。
彼が今年サンタクロースに頼んだものはサバイバルナイフ、5歳児にしては殺意が溢れている。
これはそんな彼に訪れた奇跡の物語である。

クリスマスイブ、和雄とその父は居間でテレビを観ながらサンタについて話し合っていた。

和雄「お父さん、サンタさんって何処にいるの?」
父親「サンタさんはお父さんなんだよ、サンタさんなんて実は居ないんだ。
   あんなもの信じるだけ無駄なのさ、リアルに生きていこうじゃないか。」
この男、我が子に対して相当夢を持たせたくないらしい。

和雄「ウソだー、サンタさんは赤い服を着ているよ。お父さんは赤い服なんか持ってないじゃないかぁ。」
と言うや否や父親は立ち上がって和雄を寝室へ連れて行き、秘密のクローゼットを開けた。
クローゼットの中には赤い服がびっしり並んでいる。

和雄「で、でもサンタさんはトナカイを飼っているよ!お父さんトナカイなんか飼ってないでしょ。」
父親「トナカイ、それは人間のこざかしい知恵が作り出した偽りの生き物。」
なんだかよく分からないが5歳児をうまくごまかした。

和雄「サンタさんはおヒゲが生えているのにお父さんは生えてないよ。」
父親「アレはカビだ。」
サンタのイメージが悪くなった。

和雄「そういえば、前にお父さん『冬は寒くて嫌いだ』って言ってたよ。」
父親「冬なんてものはない。」
対抗しきれなくなってとうとう無茶苦茶言い始めた。
和雄「ほらーやっぱり冬が嫌いなんじゃないの?」
父親「は?何言ってんのお前?勘違いすんな、仕舞いにゃぶっ飛ばすぞ。」
お父さん泣きそうだ。

その日の夜、和雄は父親との大口論の末、勝負は引き分けに終わり床に着いた。
父親は息子に口論で勝利できなかったことが早々悔しかったらしく、家を駆け出していった。
それに対して、和雄は布団に入ると口論の疲れもあってすぐ寝てしまった。

深夜2時30分、ついにサンタらしき人物が姿を現した。
その怪しい人物は、市川家に仕込まれている数々の難関トラップをくぐり抜け、
とうとう和雄の部屋の前にたどり着いた。
ギィ……………バタン ガタガタ バキバキッ
何か破壊した、間違いなく破壊した。一体何なんだこのサンタは。
サンタは部屋のドアノブを剥ぎ取ってしまったらしく、アロンアルファで念入りに接着していた。
バキッ
再び何かを破壊した。
しかしサンタはもう無視し、持参した「イトーヨーカドー」の袋からプレゼントを取り出して、
こっそりと暗闇の中にそれを置いて去っていった。

翌朝、和雄は目を覚ますと同時に周りを見渡した。
足元には赤いリボンで結ばれた白い箱が置いてあった。
普通置くのは枕元だろうが、そんなことも気にせず和雄は早速プレゼントを開いた。
和雄「何でこんなに紙でいっぱい包んであるんだー。」
包装紙が7重になっている、そんな厳重に守る必要があるのか非常に疑問。

箱の中は空だった。

和雄は涙ぐみながら父親の寝室に走っていった。
和雄「お父さーん、サンタさんのプレゼント何も入ってなかったよぉ。」
父親「そうかそうかそれは残念だったな分かったら消えろ。」
こいつ本当に父親か。
和雄「サバイバルナイフほしかったよー、うわーん。」
父親「そもそもお前は何でそんなものがほしかったんだ、和雄?」
和雄「え…、ただ…カッコよかったからだよ。」
父親「ふっ…浅はかなり。姿形でモノを判断するとは、未熟もいいとこだ!
   サンタが本当にお前に贈ったものは『見極めの心』だということにまだ気づかんか!」
和雄「ちっ…ちくしょおおおおおおおおおおおおおおおお!」

後に彼は世界を手中に収めるほどの大物になる。



 
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