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東京某所の一軒家に住んでいる市川家は、何処にでもいる一般的な3人家族
ではない。
彼らは一見普通の仲良し親子に見えるが、家庭内での会話などには突っ込みどころが満載である。
なんたって家のインターホンは押した瞬間に爆発するし、
表の玄関は敵を欺くための偽物で、そこから出入りはできない。
家の中でいえば、キッチンには何故か調理具が包丁しかなく、エアコンには毒ガス噴射機能が搭載されている。
極めつけは、玄関にある郵便受けの中で犬を飼っていることだ。
そんな彼らの様子を観察してみよう。

市川家の一人息子である和雄は、今年から「区立勉強は教える気ありません小学校」へ入学した。
もちろん給食制度があり、和雄は入学前から学校の給食というものに憧れていた。
しかし母親のジュリーは自分が弁当を作ると言い張り、毎日学校へ無理矢理弁当を持って行かせている。
和雄「お母さん!給食があるんだからお弁当はいらないってば!」
ジュリー「給食だけじゃ足りないのよ私。」
和雄「なんでお前の話だよ。」
ジュリー「あ、母親に向かって何その口のきき方は。先生は悲しいぞ。」
和雄「誰だお前。」
ジュリー「口答えするな!罰として廊下に立ってます!」
和雄「お前が立つのか。」

夕食はというと、主に3人そろって食べることが多い。
父親は隣町で働いているので通勤にさほど時間もかからず、日が暮れる頃には帰宅できるのだ。
というのも過去の話で、実のところ彼は3年前に脇が臭いという理由で会社を解雇され、
それからというもの、毎日会社に行くふりをしては公園のベンチで短歌を書いている。
最新作はこれだ。

「脇の下 かゆい」 (極度の字足らず)

父親「ただいまー。」
ジュリー「おかえりなさい、毎日お仕事大変ね。」
父親「まあね、今日は朝から会議があってクタクタだよ。」
人間ここまで嘘をつき続けるのも一つの業だろう。
ジュリー「お風呂にする?銭湯にする?温泉に行く?」
父親「なんで入浴的選択のみだよ。」
ジュリー「もう夕飯できてるんだから早く着替えて。」
父親「理不尽だ。」

和雄「わぁーハンバーグだ。」
ジュリー「違うわ。牛のひき肉がタマネギも炒めれば、そこにパン粉の卵を加えて練り、
     調味料は混ぜて、楕円形にまとめてフライパンを焼いた料理よ。」
父親「究極に意味不明な説明の挙句、メイン材料がフライパンか。」
ジュリー「早く食べてくれる?今日は7時過ぎから見たい番組があるの。」
和雄「え、7時からは僕が『ドヲえもん』を観るんだよ。」
ジュリー「いいからほら、お父さん、早く。」
和雄「は?何シカトしてんの?調子乗んなよ。」
ジュリー「ふふふ、決めたわ、この子はもうハンバーグにする。」
父親「母さん、どうしたんだ一体。疲れているんじゃないのか。」
ジュリー「疲れてなんかいないわ。ただちょっとハンバーグなだけよ。」
父親「ほらみろ、一度医者に診てもらった方がいい。」
ジュリー「定常状態では、Ψ(x,t)=ψ(x)e−iEt/Cであり、
     |Ψ(x,t)|2=|ψ(x)|2となるため粒子を見出す確率はψ(x)で定まり時刻tに依存しない。」
父親「すいませんでした。」

ジュリー「ねぇあなた、今年のゴールデンウィークはどこかに行きましょうよ。」
父親「悪いな…連休にはもうゴルフ行く予定立てちゃったんだ。」
和雄「えー、つまんないよ。」
ジュリー「まったく…、家族と仕事どっちが大切なのよ。」
父親「どっちが大切かって?…はは、バカだなお前は。
   俺が世界で一番大切なのは…ジュリー、お前に決まってるだろ。」
ジュリー「あなた…。」
和雄「待てや。」

父親「和雄、もう夜遅いんだからゲームはやめなさい。」
和雄「もうちょっと待って…あと少しでボス倒したらセーブするから。」
父親「ボスだとかセーブだとか…俺のわからない単語を使うなー!」
和雄「そこは分かれよ。」

父親「和雄、またゲームをやってるのか。」
和雄「お父さんもやる?これはブロックゲームだから簡単だよ。」
父親「ククク…たかが5歳児のくせに大人をナメやがって…。いいだろう受けて立ってやる。
   あとで泣き喚いても俺は一切make myself responsible for。」
そこで和雄は懇切丁寧にゲームの操作方法をはじめ、手取り足取り父親に教えた。
しかし彼はどうしてもコントローラを正確に握ることができず、
挙句の果てには操作方法が彼の理解の限度を超越し、コントローラを破壊した。
和雄「お父さん何してるんだよ!壊れちゃったじゃないか!」
父親「こんなものは世界にあってはならない…こいつは今ここで死ぬべきだったんだ。」
そう言うと彼はおもむろに上着を脱ぎ始め、
上半身裸のまま中世ルネサンス像的ポーズを決めた後、そのままの格好で家を出て行った。

ジュリー「あなた、今日は久しぶりに外でお夕飯でもどう?」
父親「いいな、そうしようか。」
和雄「あ、それならぼく今日はスパゲッティが食べたい。」
トム「お前の意見は聞いてない。」
和雄「いや、誰だしお前。」
父親「いやいや紹介が遅れた、彼は高校時代の親友『ひきこもりトム』だ。」
ジュリー「いつからこの家にいたのよ、っていうかそのムカつく肩書き何よ。」
トム「かれこれ12年目になります。」
父親「そういうわけだ、2人ともこれからよろしく頼むよ。」
ジュリー「実家に帰らせていただきます。」
父親「え、ちょっと待て、落ち着けジュリー!」
ジュリー「ほら、さっさと行くわよトム。」
トム「あぁジュリー。」
和雄「トムお父さん、ジュリーお母さん早く行こうよ。」
トム「はは、わかってるよ。」

父親「What happened!」




 
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