中間考査

今日は県立ボバババ中学校1学期の中間考査の日である。
今春入学した1年C組の「藤村瞬」は、中学生活初めての試験に戸惑いを隠せない。
前日の夜にヨーグルトを22個も食べてしまって、今朝はトイレに7回駆け込んだ。

初日の試験科目は「国語・理科・数学」である。
瞬「やべ、またトイレ行きたくなってきた…。」
やはりいくらなんでも22個は食べすぎだったのであろう。
「はーい、教科書とかはしまってー。机の中は空にしてー。」
「先生!筆箱は出しといちゃダメですか?」
「出したら殺すよ。」
生徒全員が一斉に筆箱を投げ捨てた。

「ほら、問題用紙配るぞ、静かに。」
廊下側の列から順々に手早く用紙を配っていく、慣れた手つきだ。
「先生、これ白紙です。」
「あ、これもだ。」
「僕もです。」
「てめぇ自体が白紙のはずねぇだろう!」
「先生、これ雑誌です。」
一体何を配っているんだこの教師は、いや問題用紙をまとめた教師の方に問題があるのか。

キーンコーンカーンコーン

チャイムが鳴るのと同時に、教室内にシャーペンの筆記する音がざわめきだす。
そんな中、不思議なことにキュッキュッという音が紛れ込む。

瞬がサインペンを握っている。

瞬「絶対この試験では消しゴムを使わない。その為にはシャーペンなんか使えない…。」
この男何が目的で消しゴムを使わないのか、相当愚かである。
瞬「やべ、漢字間違えた。『瞬』ってどう書くんだっけ。」
まだ名前を書く欄で手こずっているらしい。
瞬「くっ…、やはりサインペンじゃ無理だボールペンにしよう。」
何が無理なのか分からないが、意外に決心が固い。
瞬「よし、大問1は終わった。次は評論文の大問2だ。」

【問題】このときの作者の体調はいかなるものか。ただし健康ではないとする。
瞬「わ、分からん。とりあえずインフルエンザでいいや。」

【問題】傍線部―@の箇所で述べていることの具体例を、文章外から20字で抜き出せ。
瞬「文章外って何。」

【問題】第3段落で述べた内容に対して第4段落はどのような役割を果たしているか、次のア〜モの記号で答えよ。
瞬「選択肢多すぎだろ。」

1時限目の国語はあっという間に過ぎて休み時間になった。
クラス内の生徒たちは、仲間同士集まって答えを照らし合わせている。
その中の会話のひとつを取り上げてみた。
「ねぇねぇ、ここの選択肢めっちゃ多かったけど【ラ】だよね。」
「そんなのなかったよ。」
「!」

瞬「よし、俺は理科には絶対の自信がある。いけるぜ!」
彼は前日に理科だけを一生懸命勉強した、だからこんなことが言えるのである。
「はい、始め!」
瞬「はいはいキタキター、この問題は昨日問題集で解いたよー。
  うん、これもだねー。あ、これも。分かる、分かるよー。」
こんなことを一人頭の中でつぶやきながら問題を解いていく。しかしそんな彼も難題にさしかかる。

【問題】理科って…何?
瞬「ムズッ、ってか何で問題が語りかけてきてんの。」

【問題】この時の気温は何℃か。
瞬「この時っていつだよ。」

【問題】あの時の気温は何℃か。
瞬「余計分からん。」

3時限目、誰もが恐れる数学。
瞬「無理だよ〜、数学だけは分からないよ〜。」
こんなので大丈夫なのだろうか。しかし彼の気持ちも知らずに「時」は進み、チャイムが鳴る。
瞬「最初のほうの問題は小学校の復習だから大丈夫だと思うけど…。」

【問題】12+5=?
瞬「こんな問題が出るとは。」

【問題】3時にカステラを2つ食べました。合わせていくつ?
瞬「何を合わせればいいんだ…。」

【問題】太郎くんが家から毎分60000mの速さで歩いて20分かかって駅まで行きました。
    家から駅までは何mでしょう。
瞬「太郎くんマジ凄いんだけど。」

そんなこんなで初日の試験は幕を閉じた。
瞬「疲れた…でもまだ明日があるんだ…、勉強しなきゃ。」
家に帰って昼ごはんを食べた後、瞬は机に10時間向かったままだった。

だが10時間寝ていた。

翌日、2日間しかない中間考査の最終日。
今日の試験科目は「社会・英語」である、瞬は勉強していないのにやる気満々だ。
瞬「大丈夫…自分を信じるんだ瞬!」
前日勉強していないのに、どうして大丈夫だとどうして思えるのか。

中間考査2日目。1時限目「社会」
瞬「歴史なら小学校のとき得意だったんだけどなぁ。」

【問題】黄河文明で使われていた文字は何か。次のア〜エの中から記号を選んで答えよ。
    ア 文字    イ 文字    ウ 文字    エ 文字
瞬「社会なんて嫌いだ。」

【問題】奈良時代が始まったのは何年ぐらいか。
瞬「なんちゅうアバウトな。」

【問題】日本の本初子午線は兵庫県の何市を通っているか。
    次のア〜エの中から記号を選んで答えよ。
    ア テキサス州    イ パリ    ウ 高田くんの家    エ 海
瞬「【市】が選択肢にないんだけど。」

2時限目の社会をほぼ白紙状態で終えた瞬は、やる気も萎えた状態で次の英語に挑む。
彼にとって英語は得意でも苦手でもない微妙な教科であった。
瞬「もういいや…、適当にやるしかない。」

【問題】Appleを英語に直せ。
瞬「?????」

【問題】あなたはそば派?それともうどん派?
瞬「配点がすごく気になるな。」

【解答】He is a teacher.
瞬「何で問題用紙に答えが書いてあるんだ。」

【問題】次の長文を読んで各問に答えよ。
    This man is Jack. He is very kind.
瞬「短ッ。」

キーンコーンカーンコーン

これで彼の人生に一度しかない中学校初の試験は終わった。
答案用紙が帰ってくるのは1週間後だが、瞬はそれまで一睡も出来なかった。

そしてついに運命の日。
先生「藤村くん!」
瞬「は、はい。」
国語 25点
理科 33点
数学 18点
社会  3点
英語 21点
瞬「…やった!合計100点だ!」

彼の期末試験の健闘を祈る。




 
↑良かったら投票してやってください↑

BACK
inserted by FC2 system