アルバイト人生

俺は千葉県の某所にあるセブンイレブンでバイトをしている「荒川」という者だ。
最近始めたばかりだが、ここまで仕事が辛いとは思ってなかった。1日18時間労働である。
そろそろどこかに訴訟を起こしてみたい気もしてきたが、
差しあたって、一昨日の土曜日に起きた事件を説明しよう。

07:02
制服を着た真面目そうな男子学生が入ってきた。
俺が「いらっしゃいませー」というと、「戦闘力5」とか返事されたので殴りそうになった。
そいつは飲み物のコーナーで午後の紅茶のミルクティー、パンコーナーでピーナッツパンを買って出て行った。
それから30分ほどした後、そいつから受け取った千円札が新聞紙になっていた。

10:30
バイクに乗ったイカした兄ちゃんが入ってきた。
彼は文房具コーナーでホッチキスの芯をカゴいっぱいに入れてレジに持ってきた。
俺は多少動揺したが、なんとか普通に精算することができた。
店から出た後、男はホッチキスの芯を店の前に大量にばらまいてバイクで去って行った。
俺が困ってそれを掃除をしてたら、またバイクに乗って現れ、再び芯を大量にばらまいていった。

11:52
4人家族らしき集団が入店。家族構成はおそらく父・母・息子・娘だと思われた。
しかし、いかにも父親の風貌だった奴が、娘に「ばあちゃんは昼ごはん何にする?」とか聞くし、
息子が母親に「爽健美茶でいいの?」と聞くと、
母親が「ワンワン!」と完全なる犬の鳴き声を発したので、
俺はそろそろ耳鼻咽喉科に行かなければならないと悟った。

14:47
ニット帽を被り、サングラス・マスクをした明らかに不審な黒ずくめの男が入店。
俺は瞬間に「やばい強盗だ!」と思い、何かをしでかすまでじっと目で男を追っていた。
しかし男はお菓子コーナーでガンダムのおまけ付きのキャンディーをずっと見ていたので、
次第にただのマニアであると俺は思い始めた。
すると男は動き出し、文房具コーナーの辺りで突如でんぐり返しを開始したので、
今度はただの変態であると俺は思い始めた。
でんぐり返しをした後、結局ガンダムのおまけ付きキャンディーを1箱買って去っていった。

17:15
日が沈みかけてきて辺りが暗くなり始めた頃、太ったおばさんが入店。
彼女は入店するや否や平井堅の「瞳を閉じて」を歌い始めたので、俺は後ろを向いて爆笑した。
そしておばさんはお菓子コーナーでポテチを30袋近く持ってレジに現れた。
俺が精算をし始めると「こんなものばかり食べてたら余計太っちゃうじゃない!」
と突然キレ始め、駆け出してどこかへ行ってしまった。

19:13
雑誌コーナーで4時間近く立ち読みしている少年が居ることに、俺はようやく気づいた。
少年は一心不乱にジャンプを読み続けている、4時間でまだ読み終わらないのか。
俺が不思議そうな目で彼を見ていると、
やっと読み終わったのか、彼はジャンプを元あった場所に置いて店を後にした。
その後、俺が雑誌コーナーで新刊のマンガをそろえていたら、
さっき少年が読んでいたジャンプが先週号のジャンプに替わっていることに気が付いた。すり替え魔だ。

22:10
そろそろ俺の精神力も限界に近づいてきた、18時間まであと2時間弱、頑張れ俺。
眠たくてコックリコックリしていると、会社帰りのサラリーマンが入店してきた。
彼は俺に「すいませんがトイレを貸してください」というので、当然貸してあげた。
5分ぐらいして、彼は胸に「S」と書かれた青いタイツに赤のマントを付けてトイレから出てきた。
そして「トイレを貸してくれてありがとう、私は風のスーパーマン」と言って店から出ていった。
彼が大通りを走って横断しようとしてトラックに弾き飛ばされたのを、俺はこの目で見た。

23:59
今日のバイトが終了した、やっと家に帰れる。
するとバイトの先輩がやってきて、「よっ、お疲れ交代だ」というので俺はほっとため息をついた。




 
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